子育てと暮らし

子どもが可愛いと思えない…」その気持ち、あなたひとりじゃない|育児のリアルと向き合うために

はじめに|「愛せない自分」に罪悪感を抱えていませんか?

「子どもが可愛いと思えない——」

この言葉を、誰にも言えずに飲み込んでいませんか?

SNSでは「子育て最高!」「寝顔に癒やされる」といった言葉が並び、育児書は「愛情を持って接しましょう」と優等生のような正論を並べています。

けれど現実はどうでしょう。

・3時間おきの夜泣きで眠れず、感情が擦り切れていく
・「ママ、見て!」の連呼に返事するのが精一杯
・ふとした瞬間に「逃げたい」と思ってしまう自分

そしてそんな自分を「母親失格」と責めて、さらに苦しくなる——。

私も、小学5年と4年になる年子を育てています。二人がまだ幼かった頃、「かわいい」と思えず、感情が枯渇するような日々を何度も経験しました。

この記事では、「子どもを可愛いと思えない」その背景にある心理的・社会的要因、他の母親たちのリアルな声、そして今すぐ実践できる対処法まで、専門家の見解や公的制度も交えてお伝えします。


なぜ「可愛い」と思えないのか?

1. ホルモン・産後うつ・慢性的な睡眠不足

オキシトシン(愛情ホルモン)は確かに出ますが、それは心身が健やかであってこそ機能するものです。

実際、厚労省の調査では「出産後1年以内の母親の10〜15%が産後うつを経験」しています。

🔗参考リンク

また、睡眠不足によって前頭前野(感情のコントロールを司る部位)の働きが鈍くなることが脳科学的にも分かっています。

「可愛く思えない」と感じたとき、それは“異常”ではなく、脳と心が限界のサインを出しているということです。

しかし、睡眠を取れば解決するのか、一人ゆっくりお茶を飲めば頑張れるのか。実際は、そうではなくこの事実を知ることで、少しでも自分を責めないための情報として活用してください。


2. 「理想の母親像」に苦しめられていないか?

  • 産んだ瞬間から愛情が湧くべき
  • 泣き顔すら愛おしく感じるべき
  • 常に子ども優先が“母親らしさ”

これらは、時代やメディアが作り出した**「母性神話」**です。

こうした理想像が刷り込まれていると、それに当てはまらない自分を“ダメな母親”と感じてしまい、愛情を持ちにくくなります。

こうした理想像が刷り込まれていると、それに当てはまらない自分を“ダメな母親”と感じてしまい、愛情を持ちにくくなります。

こここそが、多くの母親が最も苦しんでいる本質的な問題なのではないでしょうか。

私自身、第一子を出産したとき、「こうあるべき」「ちゃんと育てなきゃ」という強迫観念に支配されていました。

「毎日笑顔で接するのがいい母親」
「離乳食は手作りじゃないと可哀想」
「泣かせるのは情緒に悪い」——

頭では「そんなに完璧じゃなくていい」と分かっていても、理想像から少しでも外れるたびに、自分を責めてしまう。子どもを見て「可愛い」と感じる余裕もなくなり、ただ「正しくやる」ことばかりに必死でした。

本来、子育ては“関係を築いていく過程”のはずなのに、最初から理想像の答え合わせばかりをしているような感覚だったのです。

この“理想に縛られる苦しさ”を口に出すことは、当時の私にはできませんでした。だからこそ、今、声を大にして伝えたいのです。

あなたが感じている「しんどさ」は、あなたのせいではありません。


「可愛いと思えない」母たちのリアルな声

「抱っこしながら、もう限界って何度も泣いた」(30代・一児の母)
「2歳の子に怒鳴ってしまい、自分に絶望した」(40代・二児の母)
「ママ友は笑って育児してるのに、私は壊れそうだった」(20代・一児の母)

私がとった匿名アンケート(母親54名)でも、**約7割が「子どもを可愛いと思えないと感じたことがある」**と回答。

つまりこれは、あなただけの悩みではないのです。

では、こうした気持ちを抱えた母親たちは、どうやってその苦しさと向き合い、少しずつ回復していったのでしょうか。

実は、「子どもを可愛いと思えない」と感じた母親たちの多くは、その感情を否定するのではなく、まず“認めること”から始めています

無理に「可愛く思わなきゃ」と自分を追い詰めるのではなく、「今はそう感じられないんだな」と、自分の心の状態をありのままに受け入れる。その“許し”が、感情の停滞をゆるやかにほぐしていく第一歩となるのです。

ここからは、実際に専門家たちが指摘する「母性神話」の誤解と、そこから自分を解放するための考え方についてお伝えしていきます。


専門家が語る「母性」は“育つもの”

心理学者・河合隼雄氏はこう語っています。

「母性は“こうあるべき”と押しつけられやすいが、本来は人との関係の中で少しずつ育つもの」

精神科医・岩倉拓氏も指摘します。

「“母親らしさ”は学習によって育まれるもの。完璧なイメージに縛られすぎると、自分を責めやすくなる」

母性とは、生まれつき備わるものではなく、“育児を通して育つ後天的な愛情”。そのことを知るだけでも、心は少し軽くなります。

それでも、「愛せない自分」を受け入れるのは簡単なことではありません。
“母親なのに”という言葉が頭の中で繰り返され、「他の人に比べて私はダメなんじゃないか」という思いに苦しむ人も多いはずです。

でも考えてみてください。
もしも誰かが、毎日3時間おきに起き、抱っこしながらご飯もゆっくり食べられず、自分の時間も持てない生活をしていたとしたら——
その人の心がすり減るのは当然だと、あなたなら思うはずです。

母性は「湧き続ける泉」ではなく、「注がれて初めて満ちる器」のようなもの。
愛情もエネルギーも、無限には出てきません。
満たされず、孤独で、疲弊しているときに「可愛く思えない」と感じるのは、**あなたの中の“愛が壊れた”のではなく、“限界のサイン”**なのです。

そのサインを無視せず、立ち止まり、ケアすること。
それは母親として失格どころか、本当に「子どもと向き合おうとしている証」です。


「自分を責めない」ための5つの視点

1. 感情を否定しない

「可愛くない」と感じたとき、その感情にフタをしないでください。
それは“あなたが壊れてしまわないように”脳や心が出している防衛反応です。

「こんなことを思うなんて母親失格だ」と思うかもしれません。でも実際には、そう感じる背景には、慢性的な睡眠不足・孤独感・過剰な責任感など、積み重なったストレスがあるのです。

まずは心の中でこう言ってみてください。
「いま私、しんどいんだな」「この感情は悪じゃない」——
そうするだけでも、自己否定のループから一歩外に出ることができます。


2. 物理的な距離を取る

子どもと“離れること”に罪悪感を持つ方も多いですが、**距離を取ることは「冷たい」のではなく「回復のために必要なこと」**です。

一時保育、ファミリーサポート、ショートステイ、さらには祖父母への頼りなど、どんな形でもいいのです。
たとえ1時間でも、自分のためだけに使える時間を意識的に作ることは、心の回復に直結します。

私自身、一時保育に子どもを預けて、ほんの30分コンビニでコーヒーを飲んだだけで、涙が出るほどホッとした日があります。

🔗一時保育情報・ベビーシッター


3. 他人と比較しない

SNSに投稿される“理想のママ像”を見て、「私はあんなふうにできない」と落ち込む必要はありません。
笑顔の裏に、誰にも見せていない葛藤や涙があるのが育児です。

比較してしまうときは、こう言い換えてみてください。

×「なんで私はできないの?」
→ ○「私は私のやり方でやっている」

母親の数だけ、家庭の数だけ、“ちょうどいい母子関係”の形がある。他人と同じでなくて当然なのです。


4. 誰かに話す

気持ちを言葉にすることで、頭の中で膨れ上がった“思い込み”や“責め”が、事実として整理されていきます

行政の子育て支援センターや保健師、民間カウンセラー、オンライン相談など、話す場は増えています。
「こんなこと相談していいのかな」と感じる内容ほど、実は多くの母親が感じているものです。

勇気を出して「話してみる」だけで、孤独が分かち合える安心感に変わることがあります。

🔗厚労省:子ども家庭支援の手引き


5. “愛する形”は多様

「ちゃんと抱きしめられていない」「笑顔で遊んであげられない」——そんなふうに自分の“愛情不足”を責める方はとても多いです。

でも、愛はひとつの形ではありません。

・ご飯を作って待っていること
・雨の日に傘を持たせること
・帰ってくる時間を気にしていること
・眠る姿をそっと見守っていること

それらすべてが、あなたなりの“愛情表現”です。

「無償の愛」を完璧に注ぐことよりも、日々の積み重ねで“私はあなたを大切に思っている”と伝えることの方が、ずっと現実的で、子どもの心にも残ります。


まとめ|「可愛いと思えない」ときにやるべきこと

方法内容
感情を否定しないそれは心からのSOSであり、異常ではない
一時保育を使う自分を取り戻すための時間が必要
相談窓口を活用する1人で抱えず、専門家や支援制度に頼る
他の母親と話す孤独がやわらぎ、共感が生まれる
多様な“愛の形”を知るハグや笑顔だけが愛ではない

私自身がこの苦しさから少しずつ抜け出すためにしたことは、
「家事ができない」「感情的になる」「笑えない」そんな自分を、まずそのまま認めることでした。

“いい母親であろう”とすることをやめたわけではありません。
ただ、「今日はもう無理だな」「私、頑張れないな」という日もあっていいと、自分に許可を出すようにしたのです。

すべてを完璧にこなすのではなく、「今日は笑えることだけ考える」
おもしろい動画を見て笑う。子どもが変な顔をしたら一緒に吹き出す。
泣きながらも、「なんかもう笑えてくるね」と言える自分を、少しずつ取り戻していきました。

解決とは、「正しくできるようになる」ことではありませんでした。
**「できない日があっても、生きていていい」**と、自分に言えるようになること——
それが、私にとっての再出発でした。

おわりに|「愛せない自分」にも愛を向けて

母親はロボットではありません。感情の波があって当然です。

ある日は笑顔で抱きしめられても、別の日には背を向けたくなることだってある。

でも、あなたは“母親失格”なんかじゃありません。
「そう感じるほど頑張っている」という証拠なのです。

どうか今日、自分自身にこう声をかけてください。

「大丈夫。私なりにちゃんとやってる」
「今はこれで、いいんだよ」

あなたの感情も、あなたの人生も、あなた自身が守っていいのです。

その先に、もう一度「この子が可愛い」と思える瞬間が、きっと訪れます。