はじめに｜「私なんて母親失格だ」と思い詰めているあなたへ
育児に追われ、気づけば子どもに怒鳴ってしまう。そんな自分を責め、「母親失格」と思い込んでしまう——。
そんな日々を過ごしている方へ、まず伝えたいのは、あなたは決して失格なんかじゃないということです。
実際、育児に自信を持てない親は少なくありません。厚生労働省の調査によると、「子育てに自信がない」と回答した母親は全体の約40％にものぼっています（※出典：厚生労働省「21世紀出生児縦断調査」）。
この記事では、「母親失格だ」と思い込んでしまう原因を紐解き、怒りの悪循環から抜け出すための具体的な方法を紹介します。
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私自身も「怒りすぎて」「母親失格」だと自信をなくすことによってさらに気分が晴れず、いつも怒っている母親でした…..
なぜ「母親失格だ」と思ってしまうのか？
● 理想の母親像に縛られている
- 雑誌、SNS、ママ友…どこを見ても「完璧な母親」ばかりが目に入る。子どもと穏やかに接し、家もきれいに整え、キャリアや趣味も充実させているように見える母親たち。その姿と比べて、自分だけが劣っているような気持ちになる。
- 「もっと優しくすべき」「いつも笑顔でいるべき」「叱らずに育てるべき」——そんな“べき論”に縛られて、本来の自分を押し込めてしまう。
- 実際には、どんな母親も悩みや葛藤を抱えながら子育てしているのに、外からはその苦労が見えにくいため、自分だけができていないと感じてしまうのです。
出典：子ども虐待診療の手引き
● 育児の孤独とプレッシャー
- 相談できる相手がいない。子どもと向き合う時間が長く、息が詰まる。特にワンオペ育児や実家が遠い環境では、大人との会話すらままならず、孤独感が深まりやすいです。
- 周囲の「いい母親」像との比較に苦しみ、自信を失っていく。SNSで流れてくる楽しそうな家族写真や育児自慢の投稿に触れるたび、「私はこんなふうにできていない」と自分を責めてしまう。
- 育児の悩みやつまずきは誰にでもあるにもかかわらず、それを打ち明ける場が少ないため、自分だけがダメな母親だと錯覚してしまうのです。
● 小さな失敗を必要以上に責めてしまう
- 叱りすぎた、怒鳴ってしまった、子どもを泣かせてしまった。そんな出来事は、誰にでも起こりうることなのに、自分だけが異常なミスをしたかのように感じてしまう。
- 一度の失敗を「自分はダメな母親だ」と拡大解釈してしまい、「また同じことをしてしまったらどうしよう」という不安がさらに怒りや焦りを引き起こす悪循環に陥りやすい。
- 本来なら、失敗は「次にどうすればいいか」を考えるための学びであるにもかかわらず、自己否定へとすぐにつなげてしまうクセが、自己肯定感を著しく低下させていきます。
こうして「母親失格」という思考パターンが心に定着してしまうのです。
怒りの悪循環とは？
怒りは誰にでも生じる自然な感情ですが、それが育児の中で繰り返されると悪循環に陥ってしまいます。
● 怒り→自己嫌悪→焦り→再び怒り
- 子どもに怒ってしまう→そんな自分を責める→「もう怒らない」と思う→でもまた怒ってしまう——この繰り返しが心をすり減らします。
● 「やめたいのにやめられない」苦しみ
- 本当は子どもに優しくしたい。でも、思うようにいかないとき、イライラを抑えきれずに怒ってしまう。
- そのたびに「母親失格」という思いが強まり、ますます自己肯定感が下がっていきます。
この悪循環を断ち切るためには、単に「怒らないように我慢する」のではなく、怒りの感情とうまく付き合う技術を身につけることが大切です。
私も怒りのループから抜け出せず、子どもたちに可哀想な思いをしました。
私自身も、子どもに怒りすぎた夜、自己嫌悪で泣きながら寝たことが何度もありました。
「また今日も怒ってしまった」「優しく接するって決めたのに」——そんな後悔と自己否定で、どんどん自分を追い詰めていきました。
朝になると、「今日こそは笑顔でいよう」と心に決めるのに、思いどおりにならない現実にイライラして、また怒鳴ってしまう。
そのたびに、「私は母親に向いてない」「子どもを不幸にしてしまうかもしれない」と自分を責める気持ちが強くなり、自己肯定感はどん底に。
何度もやり直そうとしては挫折して、自分を責めて、さらに苦しくなる——そんな悪循環から、なかなか抜け出せずにいました。
怒りをコントロールする具体的な方法
怒りは決して「持ってはいけない感情」ではありません。
問題は、怒りに振り回されるか、それとも怒りと上手に付き合うかです。
ここでは、育児の現場ですぐに役立つ実践的なコントロール方法をご紹介します。
● まずは「6秒ルール」で感情の嵐をやり過ごす
- 怒りのピークは、たった6秒しか続かないと言われています（※出典：アンガーマネジメント協会）。
- 怒りを感じた瞬間に、すぐに反応せず、ゆっくりと6秒数えることを意識しましょう。
- その間に「怒るべきか？怒らないべきか？」を冷静に考える余裕が生まれます。
● 感情を「責める言葉」にせず、「伝える言葉」に変える
- 怒りを我慢すると、心にストレスがたまってしまいます。
- そこで、「なんでそんなことするの！」ではなく、\n「お母さんは悲しくなったよ」「困ってしまったよ」と、自分の感情を素直に表現することを心がけましょう。
- 感情と言葉を分けることで、攻撃ではなく対話に変わります。
● その場を離れる「ミニタイムアウト」を取り入れる
- 怒りの波が大きくなりすぎたら、無理に収めようとせず、その場を一時離れることも一つの選択肢です。
- トイレにこもる、ベランダで深呼吸する、洗面所で冷たい水に触れる。数分でも物理的に距離を取ると、感情は大きく鎮まります。
● 「怒らない完璧な母親」を目指さない
- 目標は「怒らない自分」ではなく、怒ってしまっても立ち直れる自分を育てることです。
- 「あ、また怒っちゃったな」「でも次はこうしよう」と、失敗を自分責めではなく、成長のきっかけに変えていきましょう。
このように、怒りを否定するのではなく、怒りとうまく付き合う工夫を持つことが、悪循環を断ち切る第一歩になります。
完璧じゃなくていい。失敗してもやり直せる自分を信じていきましょう。
自信を取り戻すためにできる習慣
怒りをコントロールするだけでなく、日常の中で「できた自分」を積み重ねていくことが、母親としての自己肯定感を育てる近道です。
焦らず、小さな一歩から始めましょう。ここで紹介するのは、今日からでも無理なく取り入れられる習慣ばかりです。続けることで、心に少しずつ余裕が生まれていきます。
● 今日できたことを3つ書き出す
- 一日の終わりに、どんなに小さなことでも「できたこと」を3つ書き出してみましょう。子どもに笑顔を向けた、ご飯を作った、寝る前に抱きしめた——それだけで十分です。
- 書くことで「今日も頑張った自分」を目に見える形に残すことができ、無意識に自分を認める癖が育ちます。継続することで、自己肯定感の土台が少しずつ安定していきます。
- 毎日「できたこと」に目を向けることで、自分を肯定する習慣が育ちます。
● 「完璧じゃなくていい」と口に出す
- 心の中で思うだけでは効果が薄く、実際に声に出して言葉にすることが大切です。「完璧じゃなくていい」「私は十分よくやってる」と繰り返し口に出すことで、脳がポジティブな自己認識を形成していきます。
- 失敗した日こそ、「大丈夫、またやり直せる」と自分に優しく語りかけてください。自分に対する態度が変わると、自然に子どもへの接し方も柔らかくなっていきます。
● 他人と比較しない「マイペース育児」を意識する
- SNSやママ友の言葉に振り回されると、育児が苦しくなりがちです。他人の成功例は「参考」に留め、自分と子どもに合ったやり方を尊重しましょう。
- 「隣の芝生は青く見える」だけ。比べるのをやめた瞬間、あなた自身のペースで子育てができるようになり、心に余裕が生まれます。
- 比較する対象を減らすだけでも、心の負担はぐっと軽くなります。
● 子どもと一緒に笑う時間をつくる
- 一緒にふざけたり、くだらないことで笑ったりする時間は、親子関係をぐっと深めます。笑顔はストレスホルモンを減少させ、心をリラックスさせる効果も科学的に証明されています。
- 何かを教えることよりも、ただ一緒に笑うだけで「このお母さんでよかった」と子どもは自然に感じるようになります。- 完璧な教育や躾よりも、「一緒に笑った時間」が子どもにとって何よりの宝物になります。
このような小さな積み重ねが、少しずつあなたの心を柔らかくし、「母親失格」という思い込みを手放していく力になります。
家が汚くてもいい、母親が笑顔であることが何よりも大切。
専門家からのアドバイス｜怒りと自己否定に飲み込まれないために
育児にまつわる怒りや自己否定に悩む親たちに向けて、多くの心理学者や育児専門家がアドバイスを発信しています。ここでは、特に参考になる考え方を紹介します。
● 「感情は悪者ではない」——アンガーマネジメント協会より
- アンガーマネジメントの専門家によると、「怒り」という感情は自然なものであり、決して抑え込むべきものではないとされています。
- 大切なのは、怒りに気づき、自分でコントロールできる範囲に持っていくこと。「怒らない親」ではなく、「怒っても立ち直れる親」を目指していいのです。
● 「完璧な母親を目指さなくていい」——小児科医 河野美江先生より
- 河野先生は「母親失格と思ったら、それは真剣に子どもと向き合っている証拠」と語っています。
- 本当に失格な親は、自分の育児を振り返ることすらしないもの。悩んでいる時点で、あなたは十分に「良い母親」だと認めてあげてください、と励まします。
● 「まずは自分自身を満たすこと」——臨床心理士 田中真紀先生より
- 子どものために頑張ることは素晴らしいですが、親が自分自身を犠牲にしすぎると、心のエネルギーが枯渇してしまいます。
- 田中先生は、「1日たった10分でもいい。自分のための時間を持つこと」を提案しています。
- ほんの小さな楽しみ（コーヒーを飲む、好きな音楽を聴く、散歩する）が、心の回復力を育てる鍵になります。
このように、多くの専門家たちは「怒りを悪者にしない」「完璧を求めすぎない」「まずは自分を大切にする」ことの大切さを伝えています。
まとめ｜あなたは「失格」なんかじゃない
ここまで読み進めてくださったあなたは、きっと何度も「もう無理かもしれない」と思いながらも、それでも子どもと向き合おうとしてきたはずです。
怒ってしまっても、自己嫌悪になっても、それでも何度も「やり直したい」と思うあなたは、間違いなく、愛情深いお母さんです。
私たちは誰も、完璧な親にはなれません。 でも、自分の感情と向き合い、少しずつ前に進もうとする姿こそが、「母親としての強さ」だと私は思います。
「母親失格」と思ったその瞬間こそ、本気で子どもと向き合っている証。だから、どうか一人で抱え込まずに、誰かに頼っていいし、自分を許してあげてください。
あなたが、あなた自身にやさしくなれる日が増えていきますように。
そして、子どもと一緒に笑う時間が、少しずつでも増えていきますように。
それが何よりの育児の成果であり、あなたの優しさの証なのです。
