子育てから、本気で逃げたいと思っていた時期がありました。
毎日、何かから追われるように家事と育児をこなし、息をつく間もなく夜になる。
気がつけば、子どもの寝顔を見ながら泣いている自分がいました。
友達は週末にショッピングやランチを楽しんでいて、SNSには笑顔の写真が並ぶ。
私だけが何もできず、ひとり暗い部屋で、
「子育てなんてなければ…」とさえ思ってしまう日もありました。
夫とは不仲、実家との関係も薄く、どこにも逃げ道がありませんでした。
すべてが育児のせいだと感じていたし、
本来「幸せなはずの時間」を楽しめない自分を、心のどこかで責めてもいました。

第1章:「逃げたのに、全然満たされなかった」
ある日、思い切って一人で外出してみました。
子どもを親に預け、久しぶりに友人と出かけ、ランチをして、街をぶらついて。
一見、理想的な“息抜き”です。
けれど──帰り道、私はこう思ってしまったのです。
「また子育てが始まるのか……」
楽しいどころか、気持ちはますます沈んでいきました。
外食しても笑えない。
ひとりでカフェにいても落ち着かない。
SNSを見ると、また他人と比べて落ち込む。
それどころか、「1日だけじゃ足りない」「3日くらい自由が欲しい」──
そんな風に、“逃げたい欲”ばかりが膨らんでいったのです。
📌 “逃げても満たされなかった”理由を自己分析して見えたこと
なぜ「逃げ」だけでは回復できなかったのか?
- 一時的な行動で、根本の“孤独”や“自責”は癒されない
- 「また戻る日常」が憂鬱に感じてしまう
- 子どもを愛しているからこそ、罪悪感が消えない
- 逃げた後、また「完璧に戻らなきゃ」という負荷がかかる
私自身がそのあと気づいたのは、
「逃げる」ことは悪くないけれど、それだけでは心は回復しないということ。
むしろ、自分の内側の問題──
「私はどうありたいのか」「母親である前に“私”はどう生きたいのか」
そこに目を向ける必要があったのです。
第2章:逃げられない理由は「子どもを愛しているから」だった
子育てから逃げたい──そう思っていたのに、私は結局、逃げきれませんでした。
旅行に出かけたわけでもなく、長期的に家を空けたわけでもない。
一時的に離れても、子どものことが気になって仕方がなかった。
夜になれば、「ちゃんとごはん食べたかな」「寂しがってないかな」と考えてしまう。
そして気づくのです。
私が逃げられなかったのは、子どもを愛しているからだった。
◆ 「捨てたいわけじゃない」のに、罪悪感だけが残る
「子育てがつらい」「逃げたい」と言っただけで、
まるで“母親失格”のように見られてしまう空気が、今の社会にはあります。
でも、本当に子どもを見捨てたいわけじゃない。
むしろ、ちゃんと育てたいからこそ、今の自分では無理だと思ってしまう。
“限界のサイン”を出しているだけなのに、誰もそれに気づいてくれない。
🧠 子育ての中で“罪悪感”が生まれる構造とは?
🔍 母親が「ちゃんとしなきゃ」と思ってしまう背景
- 母性神話:「母なら自然にできるもの」という誤解
- 比較文化:SNSなどで“理想の母像”にさらされる
- 孤立:家庭・地域・パートナーからの支援不足
- 自己否定:「私は母としてダメなんだ」と思い込む
🔗 出典:厚労省「母親支援に関する調査報告書」
https://www.mhlw.go.jp/content/000793394.pdf
私もずっと、「ちゃんとしなきゃ」と思っていました。
でもその“ちゃんと”が、誰かの価値観でできたものだということに気づいていなかったのです。
◆ “頑張る”のではなく、“心の持ち方”を変えるという選択
逃げたいと思うことは、恥ではありません。
それは、「今の状態では無理」と心が教えてくれているサインです。
だから必要なのは、
もっと頑張ることではなく、“自分の心の持ち方”を見直すこと。
私はこのことに気づくまで、何度も「逃げたい→逃げられない→自分を責める」のループを繰り返していました。
けれど、ここから少しずつ、抜け出す方法を見つけていきます。
次章では、実際に私がどのように「人に頼ること」や「完璧を手放すこと」に踏み出していったか、そしてその変化の過程をお話しします。
第3章:子育てを楽しめるようになったのは、失敗して気づけたから
私はずっと、「母親なら頑張るのが当然」「誰にも迷惑をかけちゃいけない」と思い込んでいました。
夫は単身赴任でほとんど不在。両親とは不仲で頼れず、年子の育児をひとりで回していたあの頃。
外では笑っていても、家では泣いている──それが日常でした。
「育児を楽しもう」「今しかない時間を大切に」──そんな言葉は、
私にとってただの呪いのようでした。
◆ 「楽しめない自分はダメなんだ」と思い続けた日々
子育てを楽しめないのは、私に愛情が足りないから?
子どものことを心から大切に思っているのに、
毎日が苦しくて、心がどんどん消耗していく。
そんな自分が情けなくて、惨めで、
“こんな私に育てられる子どもが可哀想”とまで思ったこともありました。
でも、それでもやめられなかったのは、
「母親としての責任感」ではなく、「母親としての罪悪感」だったのです。
◆ ある日、感情が爆発した
ある日、息子が朝からぐずって、娘も泣き始めて、
私は食器を投げてしまいました。
大きな音に驚いた子どもたちは、泣き止んでこちらを見ていた。
そのとき、私ははじめてこう思いました。
「もう限界だ。私はもう、自分ひとりでは無理だ」
この“崩壊”こそが、実は「再構築の始まり」でした。
◆ 「誰にも頼れない」は、思い込みだった
その日の夜、私は初めて、「親に頼ろう」と決めました。
親と不仲であることに変わりはありません。
でも、「今この状況をどうにかする」ためには、私の感情よりも子どもと私の安全が優先でした。
私は、次のようなスタンスで話しました。
- “長時間”じゃなくていい、週に数時間でいい
- “全部”じゃなくていい、「送迎だけ」でも助かる
- “仲良くなる”ことが目的じゃなく、子どもと私の余裕をつくるため
「仲良くなろう」じゃなくて、「バランスを取る」と割り切ったことが、関係の改善につながったのです。
🧩 私が「頼れる環境」をつくるためにやったことリスト
- 自治体の一時保育・ファミサポに登録(実際使わなくても“選択肢”として)
- 実家や兄弟に「感情」ではなく「目的」で依頼(例:週1だけ○○してほしい)
- 頼ったあとは「感謝」だけを返す(過剰な罪悪感を持たない訓練)
- 家事代行」「宅配」など人じゃない支援も積極導入
- 本当につらい日は、「今日はやらない」選択も正当化するルールを自分に
金銭的にかかる問題ですが、夫にも「今は限界だから使わせてもらう」と自分の限界を理解してもらいました。
◆ 「完璧な母親になれない」と認めたとき、ようやく心が軽くなった
私は、ずっと「母親として100点を取らなきゃ」と思っていたのだと思います。
手作りごはん、清潔な家、いつでも笑顔──そんな“型”に、無理に自分を押し込んでいた。
でも、そこからこぼれてしまうのが本当の私でした。
怒る日もある、やりきれない日もある、それでも母親でいる。
「できないこと」を認めて、「それでも子どもを愛している自分」を許す。
それが、私にとっての「子育てを楽しむ」ということの正体だったのです。
🕊 変化の本質:「頑張る」ではなく「緩める」
育児を楽しむことは、何かを“足す”ことじゃなかった。
むしろ、“引き算”でした。
頑張ることをやめて、完璧を手放して、他人に委ねて、
自分を責めない日々を選んだ先に、少しずつ「楽しむ」が見えてきたのです。

第4章:逃げたいと思ったときに試してほしい「現実的な手段」
「もう無理」「逃げたい」「何もしたくない」
そう思った時点で、あなたはすでに限界ギリギリまで頑張ってきたということです。
まず、そのことを自分で認めてほしいと思います。
では、限界を超えそうなとき、どんな行動が“本当に自分を守ってくれる一手”になるのか。
この章では、私自身が試して効果を感じたもの、周囲で実践されている現実的な方法を制度/行動/思考の3カテゴリに分けてまとめます。
✅ 1. 制度・サービスに頼る(登録するだけでもOK)
「使う=ダメな母親」じゃない。制度は、あなたが壊れないためにある。
- 自治体の一時保育に登録(使う前提でなく、逃げ道として)
- ファミリー・サポート・センター(地域の支え合い制度)
- 子育て短期支援事業(ショートステイ・レスパイト)
- 家事代行・買い物代行・ミールキット(最低限の生活ライン維持)
- 放課後等デイサービスや療育(特性がある場合は特に)
📎 おすすめリンク:
厚労省「地域子育て支援事業の一覧」
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/kosodate/jouhou
✅ 2. 身近な人に頼る(完璧に頼らない/限定する)
“頼る”=“全部お願いする”じゃなくていい。
小さく分けて、限定的に頼ることがコツです。
- 親・兄弟・親戚:「この時間だけ」「この週末だけ」と限定して依頼
- ママ友やご近所さん:相手も“余力”がある日だけ助けてもらう
- 子どもの友達宅:「今日だけ一緒に遊ばせてもらえる?」も立派な依存先
- 自分が安心できる相手1人だけに“話す”だけでも効果あり
✅ 3. 自分の心を守る「逃げ場」の作り方
育てから“完全に逃げる”ことはできなくても、日常に“逃げ場”を作ることはできる。
- スマホ断ち・SNSミュート(比較疲れから解放される)
- ノートに気持ちを書き出す(誰にも見せない“自分への言葉”)
- 毎日の“やらなくていいこと”を1つ決める
- 深夜じゃなく“明るい時間のひとり時間”をつくる(15分でも効果大)
- 頑張る日とサボる日を“交互に”作る(リズムが崩れてもOK)
📌 心にとどめておきたいこと
「逃げたい」と思ったあなたは、弱いんじゃない。
その気持ちは、ちゃんと子どもを大事にしている証拠です。
🕊 最後に:逃げたくなったとき、すぐ思い出してほしい言葉
「今のままでいいわけがない」と思っているのは、
「変わりたい」と思っているから。
変わらなきゃいけないのは、あなたの“心の形”じゃなくて、
あなたをひとりにしている環境のほうです。
まとめ:逃げたいと思ったあなたへ
「もう逃げたい」と思うほど、あなたは十分に頑張ってきた。
それは甘えでも、育児放棄でもありません。
自分を壊さないために心が発する、まっとうなSOSです。
かつての私も、毎日逃げ出したいと思っていました。
家族のこと、仕事のこと、過去の傷──
すべてが重なって、子育てだけが「しんどさの象徴」に見えてしまった。
でも、逃げた先で気づいたのは、
本当に苦しかったのは、**子どもではなく“孤独な私自身”**だったということ。
あなたが逃げたいと思うのは、
子どもを大事にしたいからこそ、「今のままでは無理だ」と感じているからです。
だからこそ、これだけは伝えたい。
あなたが悪いわけじゃない。
あなたを“ひとりにしている環境”と、“我慢し続けた日々”が悪かったのです。
このブログを読み終えたあと、
「少し頼ってみようかな」でもいい。
「今日だけは、家事をさぼろう」でもいい。
小さな行動が、あなたの明日を変えていきます。
完璧な母親じゃなくていい。
逃げたくなる日があってもいい。
あなたは、ちゃんと親をやっている。
